ナチュラルな革を張ったタムタムにストラップをつけて肩から下げ、肘やスティックエンドで打面をコントロールしてさまざまな音色を紡ぎだしながら、「語る」ような独特のリズムを作り出していく即興のパカッショニスト。ブリキのバケツやアフリカの民族楽器も演奏に組みいれながら、ひとつひとつの音の存在感というものを重視した、シンプルで情感豊かな音楽世界を作りあげていく。
楽器を改造し、ドラムセットを解体して、さまざまなガラクタとともに「おもちゃ箱をひっくり返す」ようなパフォーマンスを行っていた風巻は、1982年夏、ソロツアーで全国各地を放浪した頃から、タイコと呼ぶタムタムをメインに音楽を組み立てていくようになる。そのタイコを抱えて、東京やニューヨークの路上で即興演奏を重ねながら、音と空間がつながっていく感覚を身につけていく。
1984年、ニューヨークでペーター・コーヴァルト、トム・コラとコンサートを行って帰国してから、明大前のキッド・アイラック・アート・ホールで、「音の交差点」というシリーズのコンサートを企画していく。そこでは篠田昌已(じゃがたら)、菅波ゆり子(PANGO)、ローリー(ルナパーク・アンサンブル)、ダニー・デイヴィス(サン・ラ・アルケストラ)といったミュージシャン達と共演をしていった。
1987年、再びニューヨークを訪れた風巻は、その年にオープンしたライヴ・スペース「ニッティング・ファクトリー」の厨房で働きながら、ダウンタウンの音楽シーンの一員として半年間にわたって活動を続ける。サム・ベネット(perc)、ジーナ・パーキンス(harp)と共演したLPを発表した1988年にはソロツアーでヨーロッパを訪れ、ミュンヘンではギタリストのカーレ・ラールと共演する。
カーレ・ラールとは1989年の国内ツアーをはじめに、ニューヨーク、ヨーロッパでともに活動を続け、1992年には、ヨーロッパ、エストニア、ロシア、メキシコ、アメリカをツアーし、アイントホーヘン(オランダ)、ペルニュ(エストニア)、ニッケルスドルフ(オーストリア)でのジャズフェスティバルや、クリーヴランド(アメリカ)で行われた「New Music across America」に参加していく。
1995年、ドイツ、スイス、エストニアから招聘したカーレ・ラール(guitar),クリストフ・ガリオ(sax)、エドアルド・アクリン(trombone)、マルト・ソー(guitar)とともに、大磯の「すとれんじふるうつ」でレコーディングを行い、「Ensemble Uncontrolled」というユニットとして、1996年にはイギリスのLEOレコードからCD「TALES FROM THE FOREST」という作品をリリースする。
2001年から、キッド・アイラック・アート・ホールでソロCD「ジグザグ/Zigzag」のレコーディングを行い、シンプルなドラムセットのピッチや倍音をさまざまにコントロールするメロディックなアプローチや、ズレや変化をともなったポリリズミックなアプローチ、そして、ドラムから離れ、ただ一つのタイコや、ドラ、マラカス、ブリキのバケツの音で空間に働きかけていく音楽を形作っていった。
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