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 Tからうさぎへ 3

大きな木がたくさん生えている街に住んでいる うさぎへ

こんにちわ。
ずいぶん返事が遅くなってしまってごめんなさい。
寒くなったな、と思ったとたんにカゼをひいて
少し休んでいたのです。
うさぎは元気にしていますか?

新しい町に引っ越して来て、早くも1ヶ月が過ぎました。
このあたりの地形も少し理解して、自転車でもすいぶん
遠くまで行けるようになってきました。

週末の朝、目が覚めて空を見上げると、もうどこかへ行きたくって
ウズウズしてします。
大急ぎで朝ごはんを食べて、海まででかけます。
いちばん、近い浜までは自転車で15分くらい。
そのさきは、そのときの気分しだいで、先日はピカピカの空が
あまりにも気持ち良かったので、海岸沿いをえんえんと走っていたら
(大きな声で歌をうたいながら)いつのまにか隣りの街に
ついていました。

隣りの街は いわゆる観光地でいつでもすごい人だけれど
私が自転車で到着したときはまだ朝も早かったので
人通りも少なく、いつもとはまるで違う雰囲気を漂わせていました。
知っているつもりでいた街のもしかしたら限りなく素に近いかもしれない
知らなかった表情。

自分の中の「知っていること」なんて、いつだって いいかげんな
ものですね。

途中でふと思い出して、この街に遊びに来るたびに必ず立ち寄る
おいしいパン屋さんへ言っていることにしました。が、どうしても
どうしても、みつけられない。もともとこのお店は道から奥まった
ところにこっそり建っている小さなお店なので、いつでも少し迷うの
ですが・・・それにしても訪れる時間帯が違うだけで、こんなに
わからなくなってしまうものかしら?
やっとみつけだした時は、なつかしい場所にかえり着いたような
気分になりました。
あたりにひろがる香ばしい匂いに誘われるようにしてお店のドア
を開けると、今まさにパンが焼き上がろうとする所。
オーブンから取り出されたばかりのパンをかかえて、また海まで戻り
早めのお昼ごはん。こたえられないおいしさでした。
まさに、早起きの特権のようなひとときでした。

うさぎの手紙に書いてあったドナちゃんのこと、あなたがドナちゃんを
思うきもち、あたたかく伝わってきました。

私も寒い日はクリームシチューを煮込んだり、甘酒を、飲んだり
(これは母ゆずり)美しい洋梨が八百屋さんの店先に並べば
(洋梨って、たたずまいも、手に包みこんだときの感じも、そしてとろける
ような味も、大好きなの)しばらく部屋に飾ってから、コンポートに
してみたり。

ただ、ドナちゃんとちがう所は、私の中のドナちゃん時間のような
ものが、週末に集中してしまう所かな。
平日、つまり仕事に行っている間はまさに闘っているかんじ。
(一体、何と?)
夜、この部屋へ帰って来れば、落ちついて体のあちこちをほぐすように
ゆっくりとごはんを作ったり、パンを焼いたりするのだけれども。

うさぎがドナちゃんを「仕事をしていても、街を歩いていても、他の何を
していても、ドナちゃんはドナちゃんらしくしているに違いない」と
確信できるのは、ドナちゃんのドナちゃん時間が、きっと力づよいもの
だからかもしれないね。
そして、その静かな力づよさがあなたの気持ちをふわりと軽く
解き放つなんて すてきだなって思います。
私にも、ほんの少しでも、誰かの気持ちを軽くする瞬間が
あればいいな。
それは、週末や、ひとりでいるときよりもむしろ、いろいろな考えを持った
いろいろな年代の人たちと仕事をしているときなんかに。
とてもむずかしいことだけれど、でも、知っているとばかり思いこんで
いることを、洋服のポケットをうらがえすようにして、全く別の小さい
空間をさがし出すことができたら、何かが少しずつ、動き始めるかも
しれないね。
そんなことから、スタートできれば。

今日は1999年さいごの1日。
今日も働いている友達が仕事を終えてから夜遅くやって来るので
今、りんごをワインで煮ているところ。
アイスクリームを添えて食べたらおいしそうだなあ、と思って。

明日は早起きして、自転車で初日の出を見に行きます。
こんなことをするのは、はじめて。寒そう。
帰って来てから暖まれるように、野菜スープも作っておこう。

一人住まいをはじめてから、一番うれしいのは、自分の台所が
できたこと。
家にいるときは ほとんど台所にいます。
本を読んだり、お茶を飲むときさえ。

きれいなジャムのびんや紅茶のカンなど、なかなか捨てられない
タイプなので、少々古ぼけていても、台所の棚にかざってあります。
そんな我が家に突然「やってきた こいぬ」も、いつも台所で
遊んでいます。
中でも、お気に入りの場所はそのジャムのビンが並んだコーナーの
ようで、そこでよく昼寝をしている。
いつも笑っているから「COUS COUS」(クスクス)という名前にしようかと思って
いたのだけれど、あんまりジャムと一緒にいるので、いつのまにか
「JAM」と呼ぶようになってしまいました。

JAMは海も好きなので、いつも一緒にでかけます。

うさぎも 海は 好きですか?

海は いつだって 私たちのこころを大きくおしひろげてくれるから
海の近くにいる、と思うだけで、私はとても ゆったりしていられます。

では、またね。
すてきな 冬休みを。
                        1999.12.31 T


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