もう思春期に近い年令になっていたころだったと思うけど、『母と子の名作劇場』というTVアニメシリーズを見ていました。もしかしたら『カルピス子供劇場』とかだったかもしれない。カルピスが提供していて「冬はホットで」というコマーシャルに、なんて無理矢理なんだと驚愕した記憶があるので(カルピスさん、ごめんなさい。もともとカルピスが苦手だったので、暑い時ならまだしも冬にまで!と思ったのです)。
今だったらスタジオジブリのアニメですよね。内容がすばらしいだけでなく、ものすごく番組選びに厳しくて民放の娯楽番組はほとんどすべてNGだったうちの母が『サザエさん』以外で唯一認めていたという点でも、わたしにとっては画期的な番組だったのです。
「きのうのマルコ(『母を訪ねて三千里』です)見たぁ?」とかいう友だちとの会話にも、生まれてはじめて元気よく参加出来たし、今思うと、いろいろとこむずかしいことを考え出す前の明るく素直な子供時代の最後の時期にちょうどあのシリーズの放送が重なっていたような気がします。
シリーズの全作は見ていないので断言は出来ないけれど、当時すごく注目していたのが、どの主人公も必ず可愛い動物を連れている、ということ。パトラッシュ、アメディオ、ラスカル。いつでも一緒。肌身はなれず。うちでも、もの心ついたころから習慣のように犬を飼っていたけれど、犬小屋の周りは殺伐とした雰囲気だったし、散歩に行くのもつらい仕事だった。可愛がっていないわけじゃないけど、それは文字どおり「自分なりの」可愛がり方で、これじゃあ犬もそんなに幸せじゃないとわかっているのにその気持ちに蓋をしているような飼い方だった。だから主人公とそのアニマルパートナーの関係を見るにつけ、人間と動物ってこんなに仲良くなれるものなの!
とか、動物ってこんなに少年の心を理解するものなの!と感動し、憧れ、同時に自分と犬の関係を省みてやけに後ろめたくなりました。まだ半分子供のくせに、動物や子供に好かれる人は良い人だ、という図式がインプットされていて、わたしって内向的でたいして人望もなく子供に人気があるはずないし、ああ、そして、犬にも・・・と思うと、自分ってなんてダメなやつ、となってくるわけです。
マルコとアメディオはお話でしかもアニメだ、ということは何の解決にもならず、「アメディオ、おいで!」というマルコの言葉でチョロチョロとマルコの肩に駆け登るアメディオの可愛さに感激しながら、動物や子供に自然に好かれ、まわりの皆から愛される明るい人気者になんて絶対になれるはずがない、という思いがトラウマめいた根のおろしかたをしたんじゃないかと思います。なぜなら、20代の初め頃までは、なんかやたらにネコが寄って来る、とか、犬がよく言うことを聞くという理由で、男の子を好きになったりしていたから。
さておき、少女の頃に悟ったように、その後の人生ですごい人気者になることもなかったし、「アメディオ、おいで!」と言えば肩に乗ってくれる動物とも出会わず、人望の篤い人気者ということ自体、もうどうでもよくなっていたのですが、最近、家の中で、気がつけばマルコとアメディオなのです。
昨年、14年間可愛がった猫が死んで、2代目を飼いはじめたところ、実にこの子がアメディオ状態なのです。「キュウ、おいで!」と言えば走って来るし(まあ来ないこともあるけどね)1階で仕事をしていてちょっと物を取りに2階に行けば一緒に階段を駆け上がって来る。
1代目は病気がちで、頻繁に恐怖の病院に連れていき大嫌いな薬を飲ませるのがわたしの役だったのと、しつこく撫ですぎるのとで、どちらかというとわたしより同居人の膝の上で眠ることが多かったのですが、2代目は、小さい頃同居人が留守がちだったこともあって、どうやら絶対の信頼を持つ相手をわたしに決めたらしい。嬉しい!
1代目の猫も気持ちの上ではアメディオに違いなかったけれど、彼は元気な頃は外にも出かけ縄張りを守らなければならないため忙しく、人生の機微を感じさせる自立した精神を持った猫だった。2代目のようなべったりといつも一緒、というのも関係が平らに過ぎる気もしないではないけれど、でもね、現実にいつでもついてくる猫って、本当に可愛いですよ。
なつかせようとして努力したわけでもないし、しつけをしたわけでもない。1代目が逝った後、うちに来る縁のある子を心から探して、やっと見つかって家に来た時、本当に嬉しかった。可愛くて可愛くて。大好きだよ、仲良くしようね、と。キュウちゃんのアメディオぶりは、たぶんこんなところに理由があるのでしょう。
『カルピス子供劇場』のころの自分が見たら、さぞかしびっくりし、そして安心するだろうなあ。
あの頃の自分は、嫌われたくない、好かれたいという思いが先に立っていたんでしょうね。
どう思うかは相手の領分、相手を好きなら好きでいればいい、きっと、こういうことだったんですね。
そういえば、幼稚園で子供にダンスを教える仕事を始めて随分たつけれど、やっぱわたしって人気がないかも、と悲しく感じるシチュエーションがいつの頃からか全然無くなっています。
最近では力いっぱい成長する彼らといるのが、ただただ嬉しくて楽しい。そして、かつて自分できっぱりと決定するほど人望がなかったはずなのに、これがチビッ子に結構人気があったりするのです。
好きにならなくちゃ、ではダメ、本当に大好きで、可愛くて。こういうのすぐ伝わるのでしょう。
あ、タイトルがラスカルなのに、出てこなかった。キュウのシッポがラスカルに似ているのでタイトルにしたのですが、ついて来て肩に乗ったりする感じがアメディオに似ていて、イメージが混ざってしまったようです。あしからず。
ところで、「ラスカル」ってどう綴るんでしょう?ご存知の方、教えてください。