Photography
 いま、いちばん自分を支えてくれているのが、写真を撮ることです。といっても写真を始めたのはたったの一週間前で、やっとカメラの使い方が最低限にわかったところ。ダンスの作品のなかで、マクロ撮影した映像とスライドプロジェクションしたいと思ったのがきっかけですが、とりあえず、今は、カメラのレンズを通してものを見るということ事体がおもしろくてしかたない。
どこに行くにもカメラと一緒の毎日です。荷物を持って歩くのが嫌いで、「持ち物は1gでも軽く」ということを人生の基準のひとつとして採用してきたことを思うと、一眼レフを持ち歩くということだけで、すでに人生観の改革です。
実際に撮り出してみて、なぜ、メカに弱く整理整頓の苦手な自分が写真をやりたいと思ってしまったか理解しました。写真に必要なのは集中力と思い切りの良さと、判断力と、自分を明け渡さない強さです。しかも、そういうことを独りでいる時にではなく、かならず他者を目の前にして発揮できなくちゃいけない。ながいあいだ自分ひとりで創り踊るというやり方をつづけてきたなかで、こういうことを鍛えなおす時期にきているんじゃないかと思うわけです。そして、自分の感動を人に伝えるには、それを自分だけの問題にとどめない客観的な視点が必要で、カメラという機械とカメラの向こうの対象物なしに成立しえない写真という表現が、そこらへんのことをいちばんクリアにしてくれるんじゃないかと思う。
 とにかく、おもしろいです。ものを見るということが、どんなに主観的な行為であるかつくづく実感します。客観性に支えられたなかで自分の感動を伝えることができたら、それがきっと"いい写真"であり、質のいい表現なのでしょう。

 外は雪で夜中なのに、どこかでネコが激しく鳴きながら歩いている。出かけなければならない理由があるんだろうけれど、きっと毛皮はびしょぬれで、足だって凍えているにきまっている。そう思うと、それでも行かずにはいられない本能の厳しさや生き物の哀しみがおしよせてくる。
 こんなネコの声が聞こえてくるような写真を、いつか撮れるようになりたいものだ。