黒瀬朋子さま
お手紙どうもありがとう!
わたしのほうこそ、黒瀬さんはうさぎのことわすれちゃったかなあ、と思っていたからポストの中に手紙を発見したときは、うわぁ!って思いました。差出人の名前を見なくても黒瀬さんからだって、ピンときたよ、それくらい嬉しかったんです。
この2ヵ月たいへんでしたね。家族が病気になるとか、そういういろいろな辛いことって、誰もが避けられないことですものね。そうとわかっていても、せめて自分の大好きな人たちの身の上には辛いことや悲しいことが起りませんようにと祈らずにはいられません。うさぎのちっぽけなあたまのなかのこんなお祈りじゃ、あんまり力にはならないんだけど。
春になったら花が咲くみたいに、人生にはすごく楽しいことや幸せがたくさん用意されていて、よっぽどのへそ曲がりでない限り、それらを避けて通ることは出来ないものなのよ、なんて考えてみると、けっこう強気になれたりします。「ゆうれい」のことはよくわからないけど、さびしいときにドナちゃんを思い出すと元気が出てくるとか、そんな感じかなあ。
いつも一緒にいられる人への親しさと、離れているけど思い合える人への親しさは、どう同じでどう違うんだろう。
生きていることと、死んでいること(?)の違いって、この感じに少し似ているのかも知れない。
最近、わたしは、こいぬに連れられて、毎日町のどこかで開く沈丁花や梅の花を見に行っています。庭先では、去年の冬にドナちゃんが「たいへんだ、植えるのすっかり忘れてた」とあわてて植えていったチューリップが、遅すぎたのかなあ、という心配をよそに、ニョキニョキと芽を出しています。
チューリップの芽ってかわいい!チュッと突き出したくちびるみたいです。
黒瀬さん、春を楽しんでね。
春にはいろんな花が咲いて、いろんな匂いがして、着るものもなんかかわいいのが着たくなるし、それからお花見だってできるし。
春の黒瀬さんに楽しいことや嬉しいことがたくさんやって来ますように。
ずっとともだち
うさぎより
追伸
そうそう、うちのこいぬの名前は「こいぬ」だよ。
それからね、「うさぎ」は冬眠はしないの。だって冬には、きれいな空や、あっったかいストーブや、おいしいものも色々あるから、冬眠しちゃうのはもったいなくって。
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