うさぎさま
2ヵ月遅れのお返事です。
ああ、もう私のこと、忘れてしまったのではないでしょうか? そもそも「うさぎ」は記憶力いいのかな。冬眠中にすかっり冬眠前のことをなくしていそう、、、、。
とはいえ、悪いのは私です。本当にごめんなさい。
Tシャツをいただいたのはクリスマスで、もう明日はひな祭りです。
その間、すごくいろんなことがありました。
一番大きかったのは、父が入院したことです。
「老い」とか「死」とか「家族」とか、目の前にたくさんの課題をつきつけられ、パニック状態になってしまいました。生まれて初めてタフにならねばと思いました。
このことについてはまだうまくお話できないのです。すみません、、、。
でも、ようやく容態も落ち着き、私自身も普段のペースを取り戻せるようになりました。そうしたら、もう春に近づいてきていました。
いただいたTシャツは、ハンガーにかけてよく見えるところに飾っています。
そうすると、天使のぬけがらのように見えるのです。
うさぎさんは「ゆうれい」の存在を信じますか?
私は信じてはいないんだけど、死んだ人が生きている人のことを心配して、透明な存在のままうろうろするって物語は好きなんです。
昔、倉本聡のドラマで『あなただけよ 今晩は』というのがあって、死んでしまった妻(ああ名前を忘れてしまった。うりざね顔の美人)が夫(藤田まこと)のことが気になって死にきれずに夫のそばで右往左往するんですよ。ほのぼのするコメディー。(映画『ゴースト』も似たシチュエーションだけど、あれはいただけませんでしたね。そういえば)
なので、すごく辛い状況とかあると、死んだおじいちゃんや、おばあちゃんや友だちが、隣ではげましてくれたり、「ちっ、なんでそうするかなー」なんて死んだ人同士であきれながら話していたりする姿を想像するんです。一番辛い時はそこまで気持ちの余裕ないんですけどね。
そんなふうに、このいろんなことのあった2ヵ月も、うさぎTシャツを着た天使が、私のこと見ていてくれたように思えるんですよね。かわいい天使ならいいけど、頭のうすくなったおじいちゃんじゃ、雰囲気出ないですね。
おじいちゃん、もし着たかったら(着ていたら?)ゴメン。
私も着てみましたよ。その日は紺色のロングスカートをはいていたので、高校時代の聖歌隊を思い出しました。聖歌隊の歌は、卒業してから好きになりましたね。いまも、聴いてみたいなあとときどき(とくにクリスマスシーズンは)思います。
聖歌ではなくても歌がうまいって素敵ですよね。
カラオケはすごく苦手なのですが、ミュージシャンの方々とか、うまい人の歌を聴くと心あらわれます。
もし、生まれ変わったら、とびきり歌のうまいシンガーになりたいなあなんて思ったりします。
「うさぎ」は歌うんだろうか?
「天使」は歌うんだろうか?
あ、ちびウや、つるウや、ゴロゴロも、私には聴こえない声で秘かに歌っていたらいいなあ。
そうそう、人が寝ている間に人形たちが動いたり話したりするっていう物語も好きで、子供の頃はそれを少し信じて「お人形のためにはやく眠らなきゃ」「ここで目を開けてはだめ!」と必死に寝ようとしました。
いまや、眠る時間が朝近いので、お人形たちにはかわいそうですが。
つるウ「だいたいさあ、窓の外見えるようにって窓際に置いてくれるけど、
寒いんだよー、この時期」
ゴロゴロ「そうそう、僕なんか寒いからってBagの中半分入れられてるけ ど、きゅうくつなんだよなー」
なんて話していたり?
ものすごくかっこわるいことに、「うさぎTシャツを着た自分」の絵を描き損じているうちに便せんがなくなってしまいました。一番お気に入りだったのに、、、。
ごめんなさい、最後の一枚はこれにさせて下さい。
約半年間、とても楽しかったです。
ときどき、うさぎさんや、うさぎさんのお家のこいぬくんや(名前は何ですか?)ドナちゃんのことを思い出します。
よく晴れた午後とか、クリームシチュー色の空の日とか、「いい坂」を見つけたときは必ず。
そして、思い出す人たちが何人もいるというのはうれしいことだな、と思います。どうもありがとうございました。
またときどきお手紙書きますね。
天使の姿はご想像におまかせします。
針金に角砂糖をつるしておくのも忘れずに。
ココロおだやかな春がうさぎさんのもとに訪れますように。
では、また。
2000.3.3 黒瀬朋子
ひなまつりになりました!
[一つ後のお手紙]