Dance ta Insta
ダンスをやってますというとたいてい「どんなダンスですか?」とききかえされて、この質問はいままで何度となくされているのにどうもうまくこたえられない。たぶん相手のひとは社交ダンスなのかクラッシクバレエなのかブトーなのかという程度のカテゴライズを求めているだけなんだろうけど。
 わたしの「ダンス」には「もの」がたくさんでてくる。”共演者が「もの」である”というスタイルを選んで数年がたつけれど、3年程前に本番の1ヶ月前に足の骨を折ったのがひきがねになって「もの」にそそぐエネルギーが圧倒的に多くなった。映像も、自作のオブジェや既製の日用品でインスタレーションされた空間と身体の共演という感じ。針金で編んだドレスや、ごわごわのトルソーや、重たすぎるワークブーツとか、細い糸でガラスのコップがいっぱいつるしてあったり(しかも水がはいっている)、要するに踊りやすい状況を整えてくれる「もの」ではなく、クールな他者として独自に存在してしまう「もの」たちだ。
 何もない空間にからだひとつ置いて、そぎおとされた空間のなかに動きによって目に見えない世界を構築していくのがダンスという表現の基本だとしたら、私のダンスは逆の方へ進んでいるのかもしれない。「もの」のあいだで不自由にうろうろおろおろしている身体。コップやバケツに負けそうな存在。でも、そんな身体から何かすごく「感じられるもの」が生まれてくるかもしれない、と思っている。「ゴダールのマリア」でガソリンスタンドで奇跡がおきたみたいに。 日常の延長線をたどっていただけなのに気づいたら、とんでもないところに運ばれちゃっていた----そんなスタンスで踊りたいしダンスをつくりたいのです。
 そんなわけで、わたしのダンスは、わたし的なジャンル名で、インスタレーションとダンスのミックスといういみあいで ダンス タ インスタ、Dance ta Insta,です。(1997/12/26)

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