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みなさんへ


こんにちは。
梅雨もまだ開けないのに、なんだか急に暑くなりました!
いかがお過ごしですか。
わたしは元気です。(ほんとは少し夏バテ気味だけど)。
こいぬもどうやら暑さにまいっているみたいだったので、今日、思いきって散髪してあげることにしました。
ところが、
「いちばん苦手なのはじっとしていること。なぜなら、こいぬってものは、すごく俊敏な多動動物だからね。」
と、自分で言っていたとおり、こいぬったら、すぐにくんくんしたり、耳をピクピクさせたり、半分ぐらい刈り終わったところで、
「もう、飽きちゃった。後は来年の夏でいいや。」
といって、飛んできた蝶々を追っかけて行ってしまったり、そんなだから、なんとか全部刈ったものの、出来は散々。
「たしかに、涼しそうではあるが、かなりのトラガリだわ。」とうろたえていたら、鏡を見て、それまでは不振そうにしていたこいぬが、トラガリというのはなかなか勇ましくオトコらしいかんじがする、と、しみじみと感想を述べたので、とりあえず勇ましくオトコらしい、ということになり、なんとかまるく納めることが出来ました。
実際、髪型のことなんかに全く頓着せずに揚々と過ごしている様子は、本当に勇ましくオトコらしいとも言えます。つまり、実はこいぬは本当は勇ましくオトコらしいこいぬだったのかも知れません。

ところで、わたしの最近の関心事は「いもむしは、時速何キロ(メーター)で進むことができるのか」ということです。
庭に植えた小さな山椒の木に、ある日、揚羽蝶の幼虫が来て、もりもりと葉っぱを食べるのではじめは困ったなと思っていたけど、見るたびにまるまると太っていくのがだんだん可愛くなって、蛹になって蝶々になるのを楽しみにしていたの。
当然、うちの山椒の木で蛹になってくれるものと思っていたら、ある日、すかっり葉っぱを食べ尽くして、どこかに行ってしまいました。
わたしもこいぬも「揚羽蝶のアゲコ」と名前をきめて、とっても可愛がっていたのに。蝶々になるのをすごく楽しみにしていたのに。
それにしても、あんなにモゴモゴとしか動けないアゲコがどうやってよその山椒や蜜柑の木を探すのでしょう。匂いでわかるのかしら。急げばもっと素早く動けるのかしら。アゲコがお腹をすかしてモゴモゴ歩いているところを鳥に襲われでもしたらと思うと、気がきじゃないのです。
というわけで、本気になった場合のいもむしの歩行速度が気になっているのです。知ってどうなるわけでもないけど知りたいのです。

今ごろアゲコはどこに居るのかしら。
ある日、ふとやって来て、ふといなくなってしまうなんて。
でも、ものごとって皆どこかそういうものなのかも知れませんね。
やって来て、去っていく。
ひとでも、ものでも、時間でも。
きっと大事なのは、アゲコがどこかに行ってしまったことじゃなくて、アゲコがもりもり食べてまるまる太って、とても可愛かったことなんですよね。
それに、わたし、これまでずっといもむしが恐かったのに、あんまり恐くなくなったんです。アゲコじゃないいもむしでも、ですよ。
蝶々も苦手だったけど、これからはきっと大丈夫。
だってもしかしたらアゲコかもしれないんですもの。
こんなふうに苦手をふたつも減らしてくれたなんて!
これは、アゲコからもらったプレゼントですよね!

アゲコによい夏がやってきますように。
そして、あなたによい夏がやってきますように。

追伸
もし、あなたの庭に揚羽蝶がやってきたら、親切にしてやってくださいね。
うちのアゲコか、もしかしたら、その友だちかも知れませんから。

                        2000年7月1日    うさぎより



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