マヤさま
お久しぶりです。お元気ですか。
わたしは元気です。それから、こいぬも元気です。
大ニュースがあります! なんと、うちにピアノが来たのです。ドナちゃんの知り合いの人が、その人はピアニストになるために勉強しているのですが、今度グランドピアノを買うことにしたので、古い箱型のピアノをくださったのです。まえにドナちゃんに「ピアノっていいな。弾いてみたいな。」といったことがあるんだけど、覚えていてくれて、頼んでくれたなんて!嬉しくて、飛び上がりました。茶色の木製で鍵盤がすこし黄色がかっているところも気に入っています。
長い間大切にされてきたんだろうなあ。古い家具や、ぬいぐるみみたいに愛されて使われてきたものが醸し出す独特の空気が、懐かしい友だちに会ったようなやさしい気持ちを運んできます。
そのうえ、音が出るのです。なんて素敵なんだろう。
楽譜や、練習の仕方がよくわからないので、何となく適当に弾いているだけですが、ドナちゃんは、うさぎのピアノを聴いていると眠たくなるね、といい、それは褒め言葉だと言うので、まあいいやと思っていたら、こいぬが、たまには知っている曲も弾いてほしいと言うので(いつも自家製の手作りチョコチップクッキーを食べていると、たまにはお店で売っているのが食べたくなるようなものなんですって)、音符を読む勉強を始めました。
前途多難です。適当に好きなように弾いているとあんなに楽しいのに、音譜を見ながら弾こうとするとどうしてこんなに大変なのでしょう。 『ピコットさん』という歌知ってますか。あの歌をこいぬが好きなので、一生懸命練習して、最近やっとどうにか弾けるようになりました。どうせ練習するならもうちょっと大人っぽい曲の方が、とも思ったけど、こいぬがよろこぶもののほうがやっぱりいいよね。
でもね、一番楽しいのは、やっぱり適当に好きなように弾いている時です。
『ピコットさん』の成果か、この間、適当に弾いていたら、ドナちゃんが
「うさぎのピアノを聴いているとわくわくしてくるね。」と、言ってくれたの。ばんざい!これってすごい褒め言葉ですよね。
ところで、ピアノの秘密しってますか?蓋をあけると骨みたいに線が張ってあって、鍵盤をおすと、ハンマーみたいなものがその線をたたくの。音の工場みたいでしょう。こうやって音が出来ていたなんて、びっくりだわ、と、ドナちゃんに言ったら、「楽器は、どれも音の出る秘密を持っているんだよ。楽器だけじゃなくすべてのものは、それぞれの音を持っていて、その音を生み出す秘密を隠しているんだよ。」と教えてくれました。
コップも、お鍋も、お皿も、壁も、床も、ドアも、道も、木の葉も、雨も、風も、わたしも?
音楽って特別なことじゃなくて、いつもまわりにあったんですね。
ピアノのことをいいな、と思うのと同じ気持ちで耳を澄ましたら、家の中や、散歩の途中できれいな音がたくさん聴こえてきました。
ところで、目下のわたしの目標は『小犬のワルツ』をマスターすることです。こいぬも喜びそうだし、あんなにコロコロと流れるように弾けるようになったら、ドナちゃんをどきどきさせることが出来るんじゃないかな、と思って。
それでは、今日はこのへんで。
3月37日 うさぎより