伊藤さま
こんにちは。
はじめまして。うさぎです。
最近、わたしは植物を育てるのに凝っています。
以前から花や木を見るのは好きだったけど、自分で苗を植えて育てたことは、ほとんどなかったの。
きっかけは去年の暮れにドナちゃん(なかよしのともだち)がわたしの庭に球根を植えてくれたことです。本当なら、10月末頃までに植えるものなのに、すっかり忘れていたんですって。
「大変、大変。間に合ったかなあ。」と、あわてて植えているのを見て、初めて、花が咲くためにずいぶん長い準備の時間が必要だということに気付きました。お花屋さんや、よその庭先でもう咲いているところだけ見ていた時は、そこまで考えてもみなかったのです。
その球根達が3月になってもいっこうに芽を出さず、ダメだったのかな、と心配していたら、気温がぐっと上がってコートなしで出かけられるようになった頃に、みんなで一斉に芽を出したの。それは、チューリップの芽でした。
ようこそ、お花達!
地面から顔を出したばかりの小さな芽って、なんて可愛いんでしょう。お日様にキスしようとしてくちびるをチュッとしているみたいでしょ。可愛いのは花だけではなかったのね。芽も、葉っぱも、みんな大好きです。
こんなわけでもっと植物を育ててみたくなったのです。
芝桜を鉢に植えておいたら鉢から溢れて大きくなったので、株分けして地面におろしてやりました。ニオイスミレに肥料をやったら、大きくなるどころか枯れかけてしまいました。必要なものだけが必要なのね。そのへんが、潔いくらいはっきりしています。気をつけなくては。
ところで、この前こいぬと一緒に広告を見ていたら(こいぬとわたしは一緒に住んでいるの)いろいろな果物の苗が出ていたの。こいぬもわたしもジャムが好きなので、ラズベリーの苗を注文することにしました。ラズベリージャムならこいぬの好きなチョコレートクリームサンドイッチにも合うし、わたしの好きなホットケーキにも合うからです。
一週間後、わたしたちは、届いた箱を開けて、びっくりしました。だって、箱の中に入っていたのは、ただの短い枯れ木みたいなものだったんです。さっきまで、「ぼくが、ラズベリーの穴、掘ってあげるよ。こいぬってものはかたい地面でもへっちゃらなとっても役立つあなほりどうぶつだからね。」と、有頂天になっていたこいぬも、「ひょっとして、ぼくラズベリーのこと勘違いしてたかな。もっとおいしそうで、ジャムジャムしいものだと思ったんだけどな。」と、しょんぼりしてしまいました。こいぬったらまさか、ジャムがなっていると思っていたとか?
そこまでじゃないにしても、わたしだってラズベリーの苗がここまでラズベリーらしくないものだとは思ってもみなかったわ。本当にこの枯れ木がラズベリーの木になるなんて、想像できません。これがラズベリーの若木になって、ラズベリーの花をつけて、ラズベリーの実がなって、それを摘んでジャムを煮る。ため息がでるほど長い道のりだわ。
「ぜんとたなんって、きっとこういうことだね、」と、重々しくこいぬがいいました。「でも、やってみよう。やってみなければわからない。それにぼくは、ジャムが大好きなんだ。」
なんとかこいぬは最初に宣言した通りのとっても役立つあなほりどうぶつに戻り、わたしは水をたくさん汲んできて、ラズベリーが初めての地面を気に入るようにたっぷりと水をやりました。
それから、ふたりで、ラズベリージャムを買いに出かけました。
だって、とても待ちきれなかったんです。
ラズベリージャムを添えたホットケーキのおいしかったこと!
将来の大収穫を夢見るわたしとこいぬです。
それでは、このへんで。
3月36日 うさぎより